初めて屋久島へ行ったのは1994年の夏。卒論で屋久島の植生をまとめていて、
その特異な生態系に魅せられ、行きたくて仕方なくなったのでした。当時は
まだ世界遺産には登録されていませんでしたが、縄文杉ブームはもうありました。
当時はまだ近くまで行けた縄文杉
ツアーなんかで行くと、屋久島の本当のすごさはわかりません。ぜひ登山
して欲しいです。メインの縦走路だけなら初心者向け。…とはいえ、
2泊3日のテント行ですから、事前トレーニングは必要ですが。
(私は2ヶ月間、毎週末、10kgのザック担いで山登りました(^^;))
お勧めコースは、島に入った初日、タクシー後登山30分で着く淀河小屋に
1泊、翌日黒味岳、主峰宮之浦岳と踏破して、新高塚小屋泊、3日目に
縄文杉、ウィルソン株を経て下山、タクシーで下界へ降りるコースかな。
一番体力使わないと思います。縄文杉側から登ると、ものすごい急坂なので
辛いと思います(^^;) 宮之浦岳から下るほうがラクです。一番のお勧めで
ある黒味岳(別名トーフ岳)の展望も見られるし。日本最南端にある高層湿原花之
江河は淀河小屋から30分。この縦走コースは、30分〜1時間毎にポイント
となる場所が現れるので、飽きません。道がちょっと悪いですが(^^;)
(2泊目は、高塚小屋のほうが下山に便利ですが、水場が涸れているので注意)
淀河(よどごう)小屋裏の川。
この水をそのまま飲むのでした尾根部縦走中。
こんな荷物を背負って登ります鞍部から黒味岳。山頂の岩が本当に
トーフに見えるの。顔は修正済み(笑)黒味岳山頂。右手後方が永田岳
分岐に荷物を置いて身軽になって往復します
屋久島のもう一つの魅力は海。珊瑚礁になってまして、巣潜り(ゴーグルだけ
つけて潜る)で十分、熱帯魚と遊べます。飛行機の時間ギリギリまで海に
いました(笑) 沖縄ほど見事ではありませんが、ぜひ一度潜ってみて下さい。
それから、ウミガメでしょうね。私が行った7月末というのはとてもラッキー
な時期で、親ガメの産卵と子ガメの孵化が同時に見られたのでした。亀の
上がってくる浜は夜間は出入りが制限されていて、かわりに指導員の方が
います。で、「近づいても大丈夫」といったタイミングを見計らい、なんと
カメのタマゴを手にとったり、子ガメを手に乗せたりといったことも
できるのでした。タマゴは意外と硬くて、でも薄くて。ピンポン球みたいな
手触りでした。子ガメは、海に向かってというより明かりに向かって動く
習性があるらしく、気を抜くと燈台の光にひかれてとんでもない方向に
行ってしまうため、みんなで懐中電灯使って誘導しました。海にたどり着いた
時は拍手喝采。意外なところで連帯感が生まれるものでした。また、ここは
星空が見事で(隣の種子島が日本で最も天体観測に向いているので、屋久島
も晴れてさえいれば同じ条件)、車のガラスを通してでさえ、天の川がくっきり
はっきり見え、しかも流星だらけ。これがまた大きいんですよね。「あ、
流れ星」といわれてからふりかえっても、まだゆっくり流れていて。願い事
3回どころか、余裕で5回は言えました。何かの流星群だったのかな、あの
まさしく「降る」星空は。時期的にはやぎ座流星群かみずがめ座流星群の
あたりですが。(今年は7/30にやぎ座流星群でしたが、94年も一緒かな…)
親ガメの産卵状況 一生懸命の子ガメ
そんなに勧めはしませんが、観光バスでまわれる場所もたくさんあります。
有名なのは千尋の滝だろうなあ。モッチョム岳の威容も好き。ガジュマルや
ヒルギ(マングローブ)といった、本州ではまず見られない、いかにも「熱帯!」
という木も多く見られます。屋久島の生態系の特異さは、「海岸沿いは亜熱帯、
低山は温帯、高山は亜寒帯」という、わずかな距離で日本列島を凝縮した
植生にあります。前述した花之江河の泥炭湿原も、本来北海道に多く見られる
もの。海岸で海水浴ができるけど山の上は積雪、というとんでもない所です。
フェリーで行けばよくわかりますが、水平線にいきなり山がそびえたっている
のが屋久島です。当然海風はここに当たって上昇気流となり、山に沿って
雨雲になります。そのため、「1月に35日雨が降る」といわれるくらい、
毎日雨の降る島です。面白いことに、スコールなんですね。いきなり降って
きたかと思うと、10分でやんで炎天下。また15分ほどで急に曇ってまたスコール。
ああ、熱帯だなあ、と思えます。霧の発生も多く、森の中はとても清浄で
しっとりとしています。何より、植物分布をやっていると、屋久島を南限又は北限
にしている植物のなんと多いことか。…ええ、植物学者には垂涎ものの島なのでした(笑)
千尋(せんびろ)の滝。一枚岩を流れてくる
風景は圧巻です。この他にも滝はいくつかガジュマル園。これはどこだったかな
ガジュマルの根(?)はジャングルですごいです
縄文杉までは、急坂を往復8時間かかるため、一般の人には薦めません。
かわりに、屋久杉ランドといった、車でも上がれる場所で、縄文杉レベル
の巨大杉が見られますので、そういった場所で十分満足できます。無理して
縄文杉登山をすれば、逆にまわりに迷惑かけると思いますので、体力に自信の
ない人はやめた方がいいです。どうしても行きたいなら覚悟してトレーニングを。
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